翻訳元記事: THE WORLD ENSEMBLE(June 14,2018)
By Patricia Abdelnour, Director of Social Action for Music in Madrid,Spain
TED✕LuxemburgCityにおける、エル・システマについてのプレゼンテーション 著者: Patricia Abdelnour(スペイン・マドリッド Social Acution for Musicディレクター)
【テーマ】「音楽を通した社会的包摂」
【講演者】Patricia Abdelnour 【プレゼンテーションはこちらからご覧いただけます】使用言語は英語です
【スピーチ目次】
・音楽を通した社会的包摂とは?(開始~)
・エル・システマとは (5’05~)
・世界のエル・システマ紹介(6’10~)
・マドリードで出会った男の子の話(11’17~)
・アブレウ博士追悼コンサートの様子(13’10 ~) 【スピーチのポイント】
Patriciaは、エル・システマのプログラムでは「音楽を通して社会的な包摂が可能になる」と説いたうえで、そのプログラムは各国ごとに特色を持っていることを強調しています。共通しているのは、一つ一つのエル・システマがそれぞれの社会的課題の解決のために設立されたということです。 各国の設立背景や活動の目的をご紹介します。
韓国
一人っ子家庭での子どもたちはチームで協力するという経験が乏しい、勉学のプレッシャーが大きい、自殺者が多い、などが課題で、「社会からの孤立を防ぐこと」を目的にしています。
システマ・ヨーロッパ
ヨーロッパの多くの国が参加しており、低所得家庭の子どもや、難民を対象にしていることが多いです。
ボスニア
ムスリム系住民が大量虐殺された過去があり、今も町の片隅に息をひそめるように暮らす人がいます。2013年に活動が始まりました。
スウェーデン
9000人の子どもたちが参加する「ドリームズ・オーケストラ」は、移民の背景を持つ子どもたちの融和を目指しています。
グリーンランド
活動は国中で行われており、例えば、エル・システマが児童養護施設子どもと都市部に住む子どもたちとの交流を生みました。
オーストリア
参加者の家庭をみてみると、29の言語、12の宗教、と非常に多様なバックグラウンドがあります。彼らが社会に統合していくことが目的に置かれています。
また、スピーチの中で、Patriciaは以下のような印象深いエピソードについても述べています。
スペイン、マドリードの活動では、2年前に出会ったある男の子のことをいつも思い出します。ヴァイオリンを弾いていた彼は、引っ込み思案で、学校の成績も振るいませんでした。彼はラテンアメリカからの移民のバックグラウンドを持つ子で、両親が一日に2つ、3つ、と仕事を掛け持ちして働く家庭の出身でした。 初めのころは、発表会があるたびに「僕は絶対に来ない」と言い切り、姿を見せませんでした。しかし、周りの友達が、励まし、説得し、「彼を必要としている」ということを何度も伝えると、彼はしまいにはいつも参加するようになりました。 2年後、彼は地元の音楽学校に入学しました。そして今、発表会がある度に、彼の両親はおしゃれをして、友人や近所の人を連れて演奏を聴きにやってきます。 ここで得たプライド、社会に属するということ、オーケストラを構成する一部として重要な役割をもつ音楽家であるという意識、は彼を変えただけではなく、彼の家族、接するコミュニティをも変えたのです。
長きにわたりエル・システマに携わったPatricia Abdelnour氏による聴衆を引きつける力強いスピーチ、必見です!