『東京ホワイトハンドコーラス』の4回目の練習が20日、池袋の東京芸術劇場にて行われました。今回の課題曲は「紅葉(もみじ)」と「雪」。「紅葉」といえば、「♪秋の夕日に照る山紅葉 濃いも薄いも数ある中に 松をいろどる楓や蔦は 山のふもとの裾模様♪」という、あの歌です。子どものころに誰かが歌っているのを耳にしたり、学校で習ったりして、自然に口ずさめる…という方たちが多いかもしれません。
しかし、『東京ホワイトハンドコーラス』の子どもたちの練習風景を観察していると、この「紅葉」という歌を、私たちはどこまで味わえていたのだろうかと、はっとします。健聴者は歌の意味を咀嚼しなくても、音という情報だけで歌うことができます。一方、音がまったく聞こえない、もしくは部分的にしか聞こえない『東京ホワイトハンドコーラス』の子どもたちが歌を表現するとき、歌詞のひとつひとつを丁寧に拾っていきます。
たとえば、この「紅葉」に出てくる「山」はたったひとつなのか、連なっているのか。「松」はどんな形をしているのか。「裾模様」とは、一体どんなものなのか。子どもたちはそれぞれが描く情景やイメージを顔や体の動きで仲間に伝え、そのなかからぴったりとくる顔と体の表現を選んで、「紅葉」という作品をつくりあげていきます。そのプロセスは、歌詞という手がかりをもとに、仲間と一緒に「動く絵」を描いているようにも映ります。要するに歌詞の意味を理解することなしに、ホワイトハンドコーラスは完成しないのです。
美紗生さん(小3)は、「ホワイトハンドコーラスは、感情が出てくるから楽しい」と言います。実際、歌詞について「私は(僕は)こういうイメージを持っているよ」と伝えるときの子どもたちは表情が自由で豊かで、とてもいきいきしています。そして、休み時間も楽しそうに友達と手話でおしゃべりをしています。
「ろう者は表現が豊かです。その豊かさを人前で発表して伝えてほしい」と美紗生さんのお母様。『東京ホワイトハンドコーラス』のデビューとなる『エル・システマフェスティバル2017 / ガラコンサート(10月22日開催予定)』で、美紗生さんがステージに立つことを親子で楽しみにしていらっしゃるそうです。
このデビュー公演では、上記の「紅葉」も『相馬子どもコーラス』との共演で披露されます。顔や体の動きで歌を表現する『東京ホワイトハンドコーラス』と、声を響かせる『相馬子どもコーラス』がどんな世界をつくりだすのか楽しみです。ぜひ、お越しくださいませ。