岩手県大槌町で18日に開催された「大槌子どもオーケストラ ミニコンサート」。エル・システマジャパンの弦楽器教室が大槌町でスタートしてから2年4ヶ月が経ち、バイオリンやチェロをゼロから学んだ子どもたちのスキルも上達して、いろいろな曲が弾けるようになりました。ここ半年ほどは外部のイベントやコンサートで演奏の機会をいただいてきましたが、今回は「大槌子どもオーケストラ」が主役となるはじめてのコンサート。チラシにもプログラムにも「大槌子どもオーケストラ」の名前が大きく踊ります。子どもたちは前日にクリスマスらしく色紙やカラーペンで沢山地区集会所のスペースを飾りつけし、本番を楽しみに迎えました。
今春に大槌に赴任してきた20歳の櫻井先生(弦楽器指導)の初々しい司会ではじまったコンサート。1曲目は、岩手出身の宮沢賢治が作詞作曲した「星めぐりの歌」でした。どこかなつかしい、ゆっくりしたメロディに耳を澄ませると、夜空に星たちが浮かんでは、すうっと流れていくようでした。そして2曲目は「小さな世界」。折りたたみ椅子を並べた客席には、子どもから年配の方たちまで40人ほどいましたが、みんな陽気な手拍子で「小さな世界」に加わりましました。そのあと、「きよしこの夜」、「ジングルベル」など、クリスマスの楽曲が披露され、最年少の3歳の子たちもタンバリンや鈴を鳴らして大活躍。その一方で、スペシャルゲストのリチャード・エレジーノさんやフェローたちによる「ディヴェルティメント ニ短調 K.136」などの本格的な演奏もあり、1時間半のプログラムは盛りだくさんでした。
終演後にお願いしたアンケートには、「心はずむ演奏ばかりでした(40代・女性)」、「最初の音が出た時の空間の純粋な輝きは、涙が出てしまう程(20代・女性)」、「みんなが初めて楽器を演奏する姿は真剣そのものですてきでした。音楽がみなさんを和ませる力があるなあと感じました(60代・男性)」、「8歳の子供を連れてきましたが、同じ位の子供達がバイオリンをひいている姿を見て、刺激を受けた様子だった(40代・男性)」といったコメントが寄せられました。また、「普段、身近で生演奏を聞けない(60代・女性)」、「自分にはない価値観にふれることが出来た(60代以上・男性)」など、今回のコンサートが、ささやかながら新しい風を大槌に吹きこんだ様子もうかがえました。
「大槌子どもオーケストラ」の中心にいるのは子どもたちですが、大槌町で弦楽器を学びはじめてまだ間もない大人たちも、実は今回のコンサートでは子どもたちと同じ舞台で演奏を披露しました。なかには親子で参加しているケースもあります。このあまり例のない自由でオープンなオーケストラについて、「参加されているお子さん、お母さん方の将来が楽しみです(50代・女性)」、「頑張る子供達の姿、子供から大人まで一緒に出来る事(がよかった)(40代・男性)」、「私もバイオリンひいてみたいなと思いました(40代・女性)」という前向きなコメントを地元の方たちからいただきました。
震災後さらに過疎化が進む大槌町において、子どもたちを中心に家族や地域を盛りあげていくことにより、復興への一端を担えることを私たちエル・システマジャパンのスタッフは願っています。皆さま、これからも応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。