多様な社会課題とNPOの活動を紹介する目的で、日本NPOセンターと電通が共同企画で実施した「ソーシャル・ポスター展」。エル・システマジャパンも対象として選んでいただき、電通東日本アートディレクターの熊谷由紀さん、コピーライターの山口真理子さんとのポスター作成プロジェクトが今年7月にスタートしました。
その完成品であるポスターが今月発表されました。エル・システマジャパンのロゴは、日の丸とベネズエラの国旗から赤・青・黄の3色を取り入れていますが、ポスターもその色に合わせて3種類も制作してくださいました。「参加するみなさんが自由に、楽しくモノづくりできるように。その制作物がしっかりと世の役に立つことができるように全力を尽くします。ポスターで世の中変えましょう(電通関西支社 マーケティング・クリエーティブセンター コピーライター:日下慶太氏)」、「今回のソーシャル・ポスター展では、まったく新しい視点で、え?なにこれ!?と振り向いてもらえるポスターをつくることができたらと思います(電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表:並河進氏)」という想いがしっかりと反映されたポスターには、エル・システマジャパンの活動の本質がユニークに表現されています。
黄色のポスターのモチーフは、なんと、おならです。お尻からぷわっと飛びだす五線譜のうえで、音符が楽しそうに踊っています。福島県相馬市まで取材にいらしたアートディレクターの熊谷さんは、子どもたちがとにかく楽しそうだったのが印象的だったそうです。「くしゃみもゲップもオナラの音も、みんな音楽だったんだ。」というコピーは、あらゆる音に音楽(=音を楽しむ)の可能性を見出す、子どもたちのオープンで自由な心を伝えてくれています。
エル・システマジャパン代表の菊川が思わず涙してしまったのは、青色のポスター。岩手県大槌町の人たちの心の支えである、「ひょっこりひょうたん島」が五線譜の音符の波に浮かんでいます。背景にも自然豊かな大槌らしく五線譜の山。そして、青い空に「全てが流れたこの町に、音楽が流れた。夢が生まれた。」というコピー。東日本大震災発生後、菊川がユニセフ職員として最初に訪問した現場は大槌でした。引き潮で防潮堤に引っかかっていた家、焼けこげた熊のぬいぐるみ、すべてが流され燃えてしまった町に降る寒い雪など、震災直後の痛々しい町の風景は記憶に鮮明に残っています。大槌の復興はまだまだこれからですが、多くの音楽家の情熱と行動で、未来へ繋いでくれる音楽が流れる町になりつつあります。私たちの大槌での活動が「夢が生まれる」ための一助となることを願ってやみません。
そして最後はピンク色のポスター。「バーバがバッハに恋をした。出会いは僕らの、演奏会。」というコピーとともに、頬をバラ色に染めているのは、メガネのおばあさま。今年2月に相馬で開催した「第2回エル・システマ子ども音楽会 in 相馬」に参加された方たちのアンケートの回答から制作していただきました。「子ども音楽祭」の会場は、子どもたちを中心に家族や親戚、地元の人たちでいっぱいでした。音楽に心をときめかせるのは、誰でも一緒。音楽を通じて地域が一体となり、また子どもたちを支えるという循環が生まれます。
こんなに素敵なポスターを作ってくださった「ソーシャル・ポスター展」の主催者とクリエーターの皆さまに、エル・システマジャパンのスタッフ一同、心より感謝しております。ポスターは私たちの活動を広く伝え、さらに充実させていくために活用させていただきます。本当にありがとうございました。