クリエイティブ・ワークショップ
エル・システマジャパンではこれまでも、ろう・難聴の子どもたちとも活動を共にしてきましたが、近年、ろう当事者にとっての“音楽”を探ろうとする取り組みに心を寄せてまいりました。
2020年度、ろう者の「音楽」をテーマにした映画『LISTENリッスン』(2016)の上映会・トークセッションを6月に実施し、8月からは共同監督である牧原依里氏・雫境氏を講師として迎え、 “目で生きる人”のオンガクワークショップを開催。東京芸術劇場を拠点として、計13回のワークショップを実施し、ろう・難聴の子どもたちや手話で表現することに関心のある子どもたち11名が参加しました。
この取り組みでは、ろう者がきこえない音楽に合わせて手話表現をするのではなく、自分にとっての音楽的な心地よさを言葉や意味を超えて探求することで、自分らしい表現をする力を育みました。
その後、東京芸術劇場主催による「第2回社会共生セミナー:ろう者の“オンガク”〜もし世界中の人がろう者だったら、どんな形のオンガクが生まれていた?」(2021年9月)や、ボンクリ・フェスの「音のない“オンガク”の部屋」(2021年10月
。Eテレ「ろうを生きる 難聴を生きる」で放映)へつながっていったと考えています。
2022年2月には、ユースの世代を対象にしたワークショップ「ろう者の“手指”から生まれるオンガクをつくってみよう」を行い、参加者自らがろう者のオンガクについて考えを巡らせ、実際にオンガクをつくり表現する体験をしました。
「音楽=音」という概念に縛られず、また歌詞を表現する言語的世界とは別に、ろう者の視点からの“音楽”を問うことは、固有の芸術が生まれていく過程でもあるかもしれません。音楽を享受してきた聴者にも、様々な気づきをもたらしています。
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講師
雫境(聾の舞踏家)
1996年~2001年日本ろう者劇団に在籍。1997年舞踏家・鶴山欣也(舞踏工房若衆・主宰)の誘いを受け、舞踏を始める。国内のみならず欧米、南米を舞台に活動。2000年にユニット・グループ「雫」を旗揚げ。国内、イタリア、スペイン、ペルー、韓国、フランス、アメリカで公演、ワークショップを行っている。2013年、アニエス・トゥルブレ(アニエスベー)監督の映画『わたしの名前は...』に出演。2016年、牧原依里と共同監督として映画『LISTEN リッスン』を製作。2018年、NAPPOS PRODECE「斜面」(作・演出/小野寺修二)カンパニーデラシネラ「ドン・キホーテ」(演出/小野寺修二)に出演。2019年より「濃淡(NOUTAN)」を新たに旗揚げ。2020年、Eテレ「みんなの手話」で「しゅわっとダンシング」を振付、出演。2000年東京藝術大学大学院博士課程修了。
牧原依里(映画作家)
ろう者の「音楽」をテーマにしたアート・ドキュメンタリー映画『LISTEN リッスン』(2016)を雫境(DAKEI)と共同監督。既存の映画が聴者による「聴文化」における受容を前提としていることから、ろう者当事者としての「ろう文化」の視点から問い返す映画表現を実践。東京国際ろう映画祭を立ち上げ、ろう・難聴当事者の人材育成と、ろう者と聴者が集う場のコミュニティづくりに努めている。
西脇将伍
大学生。ろう親の元に生まれ、中学までバイリンガルろう教育を受けて育つ。高校より聴者の学校へインテグレーションし、大学では「ろうコミュニティの必要性と危機」をベースとして、多岐にわたる活動に取り組む。東京芸術劇場主催ボンクリでは「音のないオンガク会」にも出演。
主催:
共催:
助成:「野村グループ基金」みらい助成プログラム