エル・システマ フェスティバル2018 / 『エル・システマ ガラコンサート』
出演者全員によるアンコールには、会場から惜しみない拍手が寄せられた
(C)FESJ/2018/Koichiro Kitashita
抜けるような青空だった12月1日(土)、池袋の東京芸術的場でエル・システマ フェスティバル2018『エル・システマ ガラコンサート』が行われました。第1部には相馬、大槌、駒ケ根の子どもオーケストラが登場。皇后陛下美智子様をお迎えした第2部では、東京ホワイトハンドコーラスとベネズエラのヴォーカル・グループ「ララ・ソモス」が共演しました。
若きマエストロに導かれ、“挑戦した”子どもたち
コンサートはセレナード第 13 番ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(モーツァルト)で幕を開けました。相馬子どもオーケストラ、大槌子どもオーケストラ、駒ケ根オーケストラの子どもたち79名を指揮したのは、エル・システマ発祥の地・ベネズエラの新鋭エンルイス・モンテス・オリバー。弱冠21歳のマエストロは、子どもたちに楽しみながら、さらなる高みに挑む演奏を求めました。ふだんは異なる場所で活動している子どもたち。コンサートには、小学1年生から高校3年生まで、楽器経験は最短で1年5か月の子どもたちが集い、弾むようなテンポの指揮のもと、心をひとつにして躍動感あふれる演奏を披露しました。
世界的指揮者ドュダメルらに、幼少より「次世代の才能」 と期待されているエンルイス・オンテス・オリバー。本コンサートが海外デビューとなりました。(C)FESJ/2018/Mariko Tagashira
編成を変え、2曲目には、ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8から第1番ホ長調「春」、第4番ヘ短調「冬」(ヴィヴァルディ)が演奏され、相馬子どもオーケストラ子どもたち4名がソリストを務めました。グループで楽器を学び、常に仲間の演奏にも心を寄せてきた子どもたちのアンサンブル力は見事なものでした。時に全身を震わせながら、情感に満ちあふれたマエストロの指揮で、オーケストラの子どもたちの憧れの曲「四季」を演奏し、会場からは何度も拍手が寄せられました。
活動7年目を迎えた相馬子どもオーケストラを中心とした編成。年長者の演奏は、年少者や楽器歴の短い子どもには「あんなふうに上手になってみたい」の憧れ。大槌や駒ケ根の子どもたちには、大きな刺激となったに違いありません。(c)Hikaru.☆
重なり合う表現が紡ぎだす、唯一無二の“音色”
休憩をはさんだのち、第2部がスタート。平成最後の師走に、美智子皇后陛下をお迎えできたことは、大きな喜びとなりました。はじめに、東京ホワイトハンドコーラスが登場。視力に障害のある子どもたちが中心の声隊と、聴覚に障害のある子どもたちが中心のサイン隊の子どもたちが、それぞれペアになって入場し、会場はあたたかな雰囲気に包まれました。𡈽野先生とコロン先生の指揮のもと、「ふるさとの空」「エーデルワイス」の2曲を披露。緊張が見られた子どもたちもいましたが、演奏が深まるにつれ、のびのびとした歌声や表現を披露し、お客様の心をひきつけていきました。
今年から始まった盲の子どもたちを中心とする声隊。
初の大舞台に向けて練習を重ねてきました。(c) Hikaru.☆
ララ・ソモスとの交流を重ねてきたろうの子どもたちを中心とするサイン隊。自分たちで考えた表現を盛り込んだ手歌を披露しました。
(c) Hikaru.☆
続いて「ララ・ソモス」が入場し、「イパネマの娘」「狂わされた人生」「四羽の鷹」「ララの夜」を披露しました。昨年に続く来日で、本コンサート前に京都といわきでコンサートを開催した「ララ・ソモス」。高いアンサンブル力と民族楽器やトランペットなどを組み合わせ、明るく味わい深い歌声と音色を届けました。
ベネズエラで20年以上活動しているホワイトハンドコーラス出身らによる「ララ・ソモス」。幅広いレパートリーとアンサンブル力で、ラテンアメリカやベネズエラを感じさせる曲を披露しました。FESJ/2018/Mariko Tagashira
その後、東京ホワイトハンドコーラスのサイン隊が再入場し、「上を向いて歩こう」「ララ州の良いところ」「ベネズエラ」の3曲を共演しました。憧れのララ・ソモスとの共演に向けて、練習を重ねてきたサイン隊の子どもたち。今ここで共に演奏できる喜びが、子どもたちからあふれ、その喜びが会場全体にも広がったかのようでした。
手だけでなく、顔も体もつかって奏でる子どもたち。
ララ・ソモスの演奏が、子どもたちをあたたかく包み込み、ここにしかない音楽を生み出しました。(c) Hikaru.☆
「共に奏で、共に育つ」エル・システマの目指すもの
コンサート出演者全員によるアンコールでは、「夕焼け小焼け」とベネズエラの第二の国歌ともいわれる「アルマジャネーラ」を熱演。どこか懐かしさを感じさせる曲に、会場内のあたたかな雰囲気は最高潮に達しました。舞台いっぱいに広がった子どもたちからは、まさに「共に奏で、共に育つ」姿が感じられ、会場内は「いま、この演奏を分かち合える喜び」が共有されたかのようでした。日本とベネズエラ、相馬、大槌、駒ケ根、東京、そして障害の有無-音楽にはすべてをつなぎ、すべてを包みこみ、つないでいる力がある―エル・システマの目指すものを、体験していただけたかと思います。
コンサートを終えた子どもたちからは、「練習ではうまくできなかったけど、本番はできた!」「やった!と思う」「自分ひとりでできないことが、友だちと一緒だとできる」「みんなで演奏できるのが楽しい」などの声が寄せられました。
(C)FESJ/2018/Koichiro Kitashita
会場の皆様から何度もいただいた拍手喝さいや、子どもたちにかけていただいたお言葉。そして、ホールに満ちあふれたあたたかな雰囲気から、子どもたち自身もスタッフも、日本のエル・システマの子どもたちの最上の音楽をお届けできたと実感しました。
今後も日々の練習を積み重ね、エル・システマらしい音楽と子どもたちの成長をお届けしたいと思います。
本コンサート開催にあたり、ご協賛・ご協力いただいたみなさまに、心より感謝申し上げます。
(文: エルシステマジャパン 広報官 浦上 綾子)
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